合併症

すべての医療行為にリスク(生命、健康に関する危険性)があるように、インプラント治療についてもリスクがあります。インプラント治療は外科手術ですから、全身疾患のある方や口腔内にインプラント手術より先行して施術しておくべき治療がある方は、これらの疾患について検討したうえでどのように進めていくかを決定します。
大きな骨造成などを伴わない、健常者の通法のインプラント手術であれば、同数本の抜歯と同等な患者さんの体に対する侵襲とリスクがあります。すなわち、1本のインプラントを通法で埋入する際の患者さんの健康や生命に関する危険性は、おおむね1本の歯を抜くことと同等です。
口腔内は常に飲食物の入口になっておりますから、感染を100%防止する方法はありませんが、感染予防の努力は医療機関、患者さん共に必要です。各医療機関の指導に従ってください。インプラント埋入の2日後くらいをピークに顎の腫脹が起き食事が困難となる場合もあります。
上あごにあっては、上顎洞内にインプラントが迷入(めいにゅう:手術中に陥る場合と、骨との結合を待つ間に陥る場合があります。)することがあります。下顎にあっては、オトガイ神経の麻痺を発症する事があります。一過性のこともありますが、長く麻痺などの症状が消退しないこともあります。これらの合併症を極力防止するために術前のCT撮影と埋入本数を超える前後の直径・長さのインプラントを用意する必要があります。抜歯窩が大きく骨吸収も進んだ症例では、時には、1本のインプラントを埋入するのに、太さ、長さ、形態の異なる4〜6種類のインプラントを用意することも考えられます。

ディスインテグレーション:骨結合を得られない場合:骨結合を得られない理由は、手術時の骨ドリリング時の火傷、感染、初期固定不足、治癒期間中の過剰な負荷、微小動揺などが単独もしくは複合的に重なって起きることです。しかし、どのような歯科医でもこの骨結合が得られないことはあり得ます。また、ベテランであることと初心者であることで優位差があるかといえば、ベテランの場合は骨造成などのテクニックと併用する機会が増えますので、初心者と変わらない頻度で発生しているケースもあるようです。これは、医科における死亡率が高い病院が必ずしも技術が劣っているとは言い切れないとする米国の高度医療の実態統計でも言えることです。(技術の高い医療機関に、難症例が集中することと、担当医自身も高度な治療を行う頻度が高くなる)いずれにせよ、基本的な問題は初心者が起こしやすいでしょうが、出血量の多い骨造成なども含めた手術は中級者からベテランクラスの歯科医で多いわけですから、感染のリスクも一概に決めつけられません。まして、口腔内は手術後も封鎖した粘膜は開きやすく、飲食物が常に通過し、湿度も高く、感染しやすい環境です。担当医は最善の努力を払うべきですが、感染のリスクが皆無になることはあり得ませんから、患者さんに、十分な説明と指導が必要です。

腫脹、疼痛:インプラント埋入2,3日後をピークに腫れを生じることがあります。抜歯後の腫れと同様に、必ず腫れませんという手術はありませんが、腫れないようにする努力は各医療機関ごとに責任を持って行っています。御痛みについては、手術当日に多く、その後は消退することがほとんどですが。重い痛みが1週間以上も続くようですと、感染を疑うべきです。遠慮せずに、担当医に相談してください。多くの場合は感染もなく腫れもなく御痛みがあったとしても鎮痛剤を飲むほどではないことがありますが、それは、患者さんがたが担当医の注意を守っていただいたことにもよります。

内出血斑:手足を打った時のような青あざをお口の周りや首にかけて生じることがあります。これは、インプラント埋入時の骨内の出血が数日の時間を経て、皮膚表面に出現したものです。必ず数週間できれいに消退致しますが、複数本のインプラント埋入では、発生することがあります。この写真では、わずかな出血斑ですが、さらに濃い色で首や肩に流れるような場合も、低い頻度ですがあります。

内出血斑